家族と同じものを食べて健康時の体重に戻す“自由食”と8時間の長時間透析とを組み合わせた、世界初の画期的な治療法を行う医師。高血圧や栄養失調を改善し、元気に活動できる身体作りに真摯に取り組むことで透析患者の社会復帰を助け、希望ある「長生き」を実現しています。
私は約50年間、腎臓医として透析の専門治療を行ってきました。元々は従来通りの4時間透析と食事制限の指導をしていましたが、患者さんの高血圧と栄養失調に心を痛めていました。そんな中、8時間透析で患者様の高血圧が改善されたというフランスの論文をきっかけに、高血圧の原因は尿毒素ではないかと考えて長時間透析を始め、十分な透析で分子量の大きな尿毒素も除去できるようになりました。
当クリニックに転院してこられる方は、これまでの過酷な食事制限で栄養失調になっている方がほとんどです。食が細くなり、薬の服用でさらに食欲が低下している方も多くいます。そのため、まずは安心して食事をしてもらえるよう、ひとりひとりの患者様とよく対話をして互いに信頼し、本音を話しやすい関係になれるよう努めています。そして体調の経過を診ながら投薬を徐々に減らしてゆきます。
かもめクリニックは、全国4カ所で透析施設を運営しています。最も新しい施設は平成20年、横浜市に開院した「かもめ・みなとみらいクリニック」で、こちらでもいわき市や大津港の施設に続き、腎臓内科外来の予約診療を始めました。厳しい食事制限で体力が落ちて困っていらっしゃる方や、腎不全保存期の方の診察、腎臓移植のご相談にも対応し、腎臓と透析に関わる様々な選択肢を提供しております。
長時間透析と自由食による体質改善のメリットはたくさんありますが、この透析を数年続けた女性の方からは色素沈着が改善して「肌の色が明るくなったと褒められたので積極的に外出しようと思える」と喜ばれる声を聞いたり、死への不安を抱くことがなくなって長生きする自信がつき「100歳まで生きるつもりだよ」という方の話を聞いたりしています。当クリニックでは長時間透析で20年近くの実績を重ね、糖尿病性腎症の患者さんの5年生存率85.0%、10年生存率58.7%と、10年後の生存率が従来の短時間透析の約2倍以上になる結果を出しています。食事制限のストレスを抱えなくてよいのも大きなメリットですが、薬づけや検査づけにせず、一般の人と同じ生活に限りなく近づけることを目指しています。仕事に励んだり外食を楽しんだりしてもらいながら、希望を持って生きる患者様たちのために今後も頑張っていきます。
所長 金田【長時間透析と自由食について】